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Channel: 妙観堂つれづれ日記
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因果の理を繋ぐのは「縁」Sさんとの思い出③

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民生委員さん「Sさんの担当をしていますが、実は様態が悪く・・・・Sさんから、もしもの時に依頼をしてあると名刺を預かったもので確認の電話をしました。」
私「はい、間違いないです、で様態は」
民生委員さん「かなり・・・・・」
私「ちょうど東京に行く用事がありますのでお伺い致します。」
入院先の病院の住所と民生委員さんの連絡先を確認。
三日後に病院に、民生委員さんが病院の事務室でお待ち頂いていました。
名刺交換、民生委員さんの名刺にはあるT教団の教会長さんの肩書きが。民生委員さんには、大変親切な対応を頂き「わざわざお越し頂いたんでしょうか?」
「いいえ、用事があったもので」と私。
Sさんの様態を事務長さんから聞かせて頂き、病室に。4人部屋にSさん。
ベッドの廻りには器機、点滴や呼吸用のチューブがSさんに。
「SさんSさんお寺さんが来られましたよ」と看護師さん。
見えないであろう目を此方に向けられました。
私「Sさん東雲寺ですよ、バタバタして連絡も出来ずに申し訳ありませんでした。東京に用事があつたもので来ましたよ。」との呼びかけにSさんの目から涙が。痰が、絡まるので気管切開の処置がされ声が出ないのですがSさんの気持ちを充分に表して頂いた「涙」のように思えました。
私「Sさん、お約束はチャンと覚えていますから安心下さい。良く頑張りましたね、もう無理はされなくて良いですからね。大丈夫ですよ。」と。
そんな内容の会話だったと記憶しています。
お別れに「Sさん帰りますね。」と手を、何となくにぎり返して頂いたような。
事務所で手続きの確認をし、寺に戻りました。Sさんが思い出話の中で言われていた皆さんに連絡、Sさんの様態やら何やら、亡くなられたらお寺に戻りますので、その時には連絡をしますので、ご焼香をしていただければ。
その中にSさんの幼なじみの方がおられ「私が葬儀をさせていただく」との申し出。私「それはSさんが困られるでしょうし、私が頼まれお約束をしていますので。」と丁重に、ご遠慮をさせて頂きました。
田舎って有り難いですね、幼友達って良いですね。「ふるさと」を持っていたSさんは「仕合わせ者」だな~と思いました。
私の「ふるさと」は遠きにありて思うもの?でしょうから。
それから1週間ほどあとに、民生委員さんからの電話「Sさんがお亡くなりになりました。火葬後にお骨は甥っ子さんにお寺に届けて貰います。」
私「御世話をおかけ致します。宜しくお願い致します。」
本堂でご本尊様にSさんの亡くなられた事を報告、勤行。Sさんの思い出の方々にご連絡。
翌々日、Sさんは甥っ子さんとお寺に。慰霊殿に手作りの祭壇に、10人ほどの方が焼香にお越し頂きました。通夜、葬儀。
昭和五十九年二月二十八日 享年75才  江東法愿信士位    注①
大東亜戦争、戦前、戦中、戦後、田舎、都会、精神、物質、清貧、強欲、等々、大混乱の中Sさんの人生、有り様を皆さんと、お話をし、人生の先達としてのSさんの人となりを心にとどめ、学ばせていただく事が出来たかと思います。
今、Sさんは当寺の永代供養墓「安養廟」に安置させていただいています。
Sさんの「思い出の方々」と「新しい縁ある方々」共に。
最近、(本当は私が仏門にお入れ頂いた以前、50年程前から)葬儀がとか法事がとか寺院はとか坊主はとか、どうも話題になるようです。
TVでも「僧侶」の方々の番組が高視聴率とか。見るに付け聞くに付け「ああ末法かと」たぶんTVは何かの意図があっての事かとひねくれて考えてしまいますが?
(実は、私の知人も出演、ヤメトキと私・決して羨ましいからではありませんが)
南米の世界最大の大河を冠した通販の会社が「定額の僧侶派遣」の販売とか。
数年前にも原子団「永遠」を冠した流通会社が「安心・定額の葬儀」とか。
どうも私たち僧侶の側に問題があるのでしょうが、「坊主にくけりゃ袈裟まで」の論理での話題が巷の賑わいに。祖師先徳・ご先祖様に申し訳ない限りであります。
明治維新の物質主義と個人主義。戦後の3S政策による影響と政教分離の憲法下で「日本人としての心(こころ)・大和魂(大いなる和の精神)」を忘失した感が致します。
「定額」って何、定額が無いと葬儀も法事も仏事が出来ないんですか?
「布施」でしょ。ある方はあるように、無い方は無いように。
有る方・無い方で「仏・真如来」が差別や区別をしますか?
「金は天下の回り物」って。綺麗事じゃなく。
とSさんとの「縁」を今更ながら思い出すこの頃です。
私を支えて頂きます檀越に深甚の感謝を申し上げ。    鬼佛庵慈敬九拜
注①(本来は戒名は伝戒大和尚・天台座主猊下にお付け頂くのが本義ですが、Sさんは未受戒でした。で私が、私の初めての仏弟子として授戒をさせて頂き、お付けしました。葬儀を執行出来るのは「三部伝燈大阿闍梨」位の伝法を受け。阿闍梨とは仏弟子になる者の規範となり教え導く者との意味・私は忸怩たる思いですが。多分Sさんはお許しかと?)









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